第20回
「OBV」は、On Balance Volume(オン・バランス・ボリューム)の略語です。この指標は米国の証券アナリスト、ジョセフ・グランビルが開発しました。「グランビルの法則」という有名な手法を開発したことでも有名で、1963年に出版した著書で紹介された出来高を活用した分析手法です。On Balanceとは、「差し引き」という意味で、出来高を差し引き計算したVolume(総量)という意味です。「出来高は価格に先行する傾向がある」というグランビルの考えが背景にあり、価格と出来高を組み合わせることで、投資の売買タイミングを捉えようとしたのです。
OBVの計算式は非常にシンプルで、足し算と引き算で計算します。
OBVを計算する日の終値と出来高を基準とし、その基準の日の出来高をはじめのOBVとします。
①直近の終値が前回の終値から上昇→前回のOBV+直近の出来高=直近のOBV
②直近の終値が前回の終値から下降→前回のOBVー直近の出来高=直近のOBV
③直近の終値が前回の終値と同値→前回のOBV=直近のOBV
例として、ある年の1月2日からのユーロ米ドルのOBVを観測したとします。1月2日の終値1.0855、出来高が5万通貨でした。下の図を参照ください。
1月3日は価格が上昇したので、前回のOBVである50000に直近の出来高である40000を足し算します。そうすると、直近のOBVは50000+40000=90000となります。
一方で、1月5日をご覧ください。前回のOBVが130000でした。直近の価格は下降しているので、前回のOBVである130000から直近のOBVである50000を引き算します。そうすると、直近のOBVである130000―50000=80000となります。
このようにOBVを算出し、それを折れ線グラフで描画して、価格変動と出来高の変動からマーケットの変化を捉えるというものです。
では、ここからは、OBVの計算式の意味を考えてみましょう。
通常の出来高は価格の下に棒グラフで表示されますが、OBVは折れ線で表示されます。
なぜ、折れ線グラフで表示されるかというと、出来高に対する考え方の違いがあるからです。
上昇した時の出来高と下降した時の出来高では、出来高として意味が違ってきます。例えば、日足において、上昇したという事は、買い方が優勢だったことを示唆し、下降したという事は売り方が優勢だったことを示唆します。
買い方が優勢であれば価格は上昇し、売り方が優勢であれば価格は下降します。
よって、価格が上昇した日の出来高は、買い方の出来高、価格が下降した日の出来高は、売り方の出来高と考え、価格が上昇した日の出来高を買い方の出来高としてプラスし、一方で、下降した日の出来高を売り方の出来高としてマイナスし、この差し引き累計の推移を折れ線で表示して分析するものです。
その結果として、価格の上昇、下降と同様に、OBVも価格と似たように上昇、下降を示しことになります。計算式にはそういった、買い方と売り方の攻防を価格という側面だけでなく、出来高という側面から捉えようとしているという意図が感じられます。
そういった意味においては、価格動向と出来高動向の両面から分析することがでるという画期的なインジケーターとなっています。
OBVを活用する際は、売買シグナルとしてではなく補助ツールとして活用します。価格と出来高の両面を見るという事は、相場の売買勢力を価格と出来高という二種類の手法で分析していることになります。価格が上昇傾向にあるというは、すでに買い勢力が売り勢力に買っていることが分かります。また、出来高は価格が上昇トレンドにあれば、それと同じように増加すると考えられます。
つまり、価格が上昇トレンドを形成しているときは、OBV線も上昇トレンドを形成しています。価格が下降トレンドを形成しているときは、OBV線も下降トレンドを形成しています。
これを確認することで、トレンドが安定しているという事が確認できます。
一方で、OBV活用方法①では、価格が高値を更新するとOBV線も高値を更新し、価格が安値を更新するとOBV線も安値を更新するパターンを確認しました。
ただ、上記の2つのパターンに属さないケースも出てきます。
つまり、価格が新高値を更新したにもかかわらずOBV線が高値を更新できない時や、価格が新安値を更新したにもかかわらずOBV線が安値を更新できないケースです。
また、価格は高値更新していないが、OBV線が先行して高値を更新したのちに価格が高値更新していくケースなどです。
このような動きは、他のRSIやMACDなどのインジケーターでも散見される動きで、ダイバージェンス(逆行現象)といわれています。
OBVにおいても、こういったダイバージェンスが出現し、これが、マーケットの変化の予兆として教えてくれます。
このあたりが、「出来高は価格に先行する」といわれるゆえんであります。
ダイバージェンスが発生したときには、細かくチャートをチェックしていく必要があります。
下の図では価格は安値更新しているにもかかわらず、OBV線が反発してきたとこで、出来高から見た売買勢力は買い方が優勢になり始めたことを示唆しています。
下の図では価格が高値更新していますが、OBVが高値更新できていません。出来高から見た売買勢力は買い方の勢いが弱くなったことを示唆しています。その後、価格は出来高の勢力に引っ張られるように反落していきました。
下の図はOBV線が先行して高値更新しており、出来高から見れば買い方が前回の高値を付けた時よりも買い方優勢であることを示唆しており、いずれ価格も高値更新に向けて動くことが想定できることを示唆しています。その後、価格は出来高の勢力通り高値更新していきました。
(まとめ)
我々はチャートを見るときに価格を中心に見ています。価格が上昇すれば買いが優勢だった。価格が下降すれば売り方が優勢だったと判断します。
しかし、価格は買い方と売り方が攻防した結果の価格ではあるものの、そこには、どれだけの力量で攻防がなされたかが分かりません。
同じ上昇でも、10万通貨の出来高と50万通貨の出来高では上昇の意味合いが変わってきます。上昇が続いているにもかかわらず、出来高が減少しているのであれば、その上昇のエネルギーは減っているという事が出来高を見ることでわかります。
その出来高という側面をOBVというインジケーターで照らし合わせて価格を見ることで、価格だけではわからない買い方と売り方の攻防や優劣が浮き彫りになります。OBVを活用して出来高の世界からもトレンドの変化を捉えていきましょう。
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チャート分析の第一人者としてセミナーで講師を務めるなど、教育活動を精力的に展開している人気講師。
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