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第21回
モメンタムとは、「勢い」と訳されますが、相場の勢いや方向性を判断するオシレーター系の指標です。このモメンタム分析が普及するきっかけとなったのは、J.ワイルダーといわれています。ワイルダーといえば、RSIやDMI、パラボリックSARを開発したことで有名ですが、数値で相場の水準を規定するモメンタムの影響を大きく受けたであろうと容易に想像できます。
トレードには順張りというトレンドを意識した手法と、逆張りというトレンドが無いときに活用する手法があります。移動平均線などはトレンドを意識した典型的な手法で、トレンドに沿って動いているときは機能性が高いのですが、相場がレンジ相場になると反応が若干遅くなるため、相場の転換点を察知するのが遅くなります。一方で、モメンタムなどの指標はレンジ相場の時には非常にうまく機能する指標となっています。
モメンタムの一般的な計算式は非常にシンプルで以下の計算式となります。
モメンタム=当日の終値―n日前の終値
(n=ある期間で、これがパラメーターとなります)
例えば、米ドル円の当日の終値が160円、n日前の終値が150円の場合を計算します。
モメンタムは「160―150=10」となります。
ただし、MT4のモメンタムは、比率を求めるのが特徴となっており、計算式が違っています。
MT4モメンタム=(当日の終値÷n日前の終値)×100
(n=ある期間で、これがパラメーターとなります。)
例えば、米ドル円の当日の終値が160円、n日前の終値が150円の場合を計算します。
モメンタムは「(160÷150)×100=106.66となります。
引き算であれば、0より大きいケースと、0より小さいケースが出てきます。比率の場合は、100より大きいケースと、100より小さいケースが出てきますので、そこがポイントになります。
では、ここからは、モメンタムの計算式の意味を考えてみましょう。
モメンタムはある期間の終値と比べていますので、引き算であっても割り算であっても、価格変動があれば数値が変わってきます。その基準はn日前と当日の終値が同じ場合であり、この場合は、引き算であれば「0」となり、割り算であれば「100」となります。ここでは比率の計算である「100」を基準に考えてみましょう。100だったモメンタムが上に動き出せば(100を超えた数値)上昇してきたことを示し、100だったモメンタムが下に動き出せば(100未満の数値)下降してきたことをしまします。つまり、100以上でモメンタムがさらに上昇してくれば強気相場になってきたと分かります。逆に100以下でモメンタムがさらに下降してくれば弱気相場になってきたことがわかります。
ここでモメンタムの大事な意味合いを考えてみましょう。ここではn日前の終値のnを10日として考えてみます。10日前よりも価格が上昇していれば基本的にはモメンタムは上昇しますが、次の日も前の日と同じ上昇率であれば、モメンタムは横ばいになります。この上昇率が同じであればモメンタムが横ばいになるというところが重要です。価格が上昇していても上昇率が同じであれば横ばいになるという事を理解するとモメンタムの理解度が一気に高くなります。ということは、価格としては上昇していても上昇率が小さくなっていけばモメンタムはどうなるでしょうか。そうです。価格が上昇していても上昇率が小さくなっていけばモメンタムは下がっていくのです。この価格とモメンタムの変化を読み解くことが重要で、計算式にはそういった意味が含まれているのです。
モメンタムが上昇率や下降率を見ていることは先ほど確認しました。これにより、モメンタムの売買サインが見えてきます。
基本の売買サインはモメンタムが100以下から100以上となり100超えてくれば買いサインとなります。そして、モメンタムがさらに上昇してくれば強気相場と判断します。
反対に100以上から100以下となり100を割ってくれば売りサインとなります。そして、モメンタムがさらに下降してくれば弱気相場と判断します。
次に、価格が上昇していても上昇率が小さくなればモメンタムは下降する、価格が下降していても下降率が小さくなればモメンタムは上昇するという性質を使った売買サインです。
価格が安値更新時に、モメンタムが直近安値を更新できない場合は買いサインとなります。
価格が高値更新時に、モメンタムが直近高値を更新できない場合は売りサインとなります。
では、まずは、基本の売買サインを確認しましたが、それぞれが、なぜ、売買サインになるのかを考えてみましょう。
上記の4つの売買サインのパラメーターはデフォルト設定のままで「14日」となっています。ということは、14日間の値動きの中で、100を超えてきたから買い、100を割ってきたから売りという事で本当に良いのでしょうか。
なぜ、そのパラメーターにしたのかという明確な理由が必要になります。下の図はパラメーターを「5日」「14日」「20日」「40日」と変えて表示しています。
このように、パラメーターを変えて表示することで、違いが明確に見えてきます。5日の変化は非常に細かく、まだトレンドが続いているにもかかわらず、100を超えたり割ったりしています。
一方で、40日にすると、ある程度トレンドに沿った変化を感じることができますが、その分、サインの出現が遅くなっています。では、パラメーターはどうすればよいのでしょうか。
答えは、各自、人によって変わるという事です。どういうことかというと、各自がどういったトレンドを狙いたいかによって、変わってくるという事です。
ある程度、大きなトレンドを狙いたい方はパラメーターが大きくなりますし、小さな波動を細かく狙いたいという方はパラメーターが小さくなります。
ですから、皆さんがどういった手法でトレードしているかで変わってくるということになりますので、ご自身のトレード手法と相談しながらパラメーターを決めていきましょう。
また、モメンタムだけで見るのではなく、他のインジケーターと合わせることで、より精度が高いトレードができるようになります。モメンタムは逆張りのインジケーターですので、順張りのインジケーターと組み合わせることで、それぞれのいいとこ取りができます。私が開発した移動平均線大循環分析を合わせることで、トレンド相場ももみ合い相場もそれぞれのインジケーターを照らし合わせながら見ることができます。トレンドがある時は移動平均線を中心に分析し、もみ合い相場になれば、モメンタムを意識して見ることで精度が高くなります。
上の図であれば、チャートの左半分はトレンドを意識したほうがよく、移動平均線の並び順が入れ替わるところでモメンタムが100を割ったり超えたりするところが狙い目となりますが、右側はもみ合い相場ですので、モメンタムが反転するところを狙ったほうが、確度が高くなっているのが分かります。
モメンタムとは勢いを見ているインジケーターであるという事を始めに解説しました。非常にシンプルな計算式ではありますが、相場の勢いを見るのに過去と現在の価格の差を見ることで上昇の勢い、下降の勢いを判断することができるのです。ただ、計算式からもわかるように、シンプルが故にパラメーターが小さいとダマシも多いインジケーターです。ですから、他のインジケーター、特にトレンド系のインジケーターと組み合わせることで精度の高い分析ができるようになりますので、高値更新、安値更新だけでなく、上昇率、下降率も価格変動に影響しているということを理解してみていきましょう。
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チャート分析の第一人者としてセミナーで講師を務めるなど、教育活動を精力的に展開している人気講師。
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