第23回
1950年代に著名なトレーダーであったリチャード・ドンチャン氏によって開発されたインジケーターです。チャネルとはもともと「水路/運河」などの意味です。HLバンドやプライス・チャネルとも呼ばれています。彼が提唱した4週間ルールが原型となっています。4週間ルールとは、4週ブレイクアウトという買い戦略で、株式市場において過去4週間の高値を抜けて新高値をつけたら、その銘柄を買うという手法です。伝説の投資家集団「タートルズ」が用いていたことでも有名です。この手法がシンプルでありながら、効果的なツールとして、株式市場だけでなくFXなどでも活用されており、ブレイクアウトシステムを可視化したインジケーターとなっています。
一定期間の高値を結んだハイバンド、安値を結んだローバンド、ハイバンドとローバンドの平均値を結んだミドルバンドの3本で構成されています。トレンドやボラティリティ、高値、安値のブレイクアウトを判断するのに活用されています。
ドンチャンチャネル(パラメーター20本)
ドンチャンチャネルの計算式はシンプルです。式は以下の通りです。
ハイバンド=過去n日間の最高値
ローバンド=過去n日間の最安値
ミドルバンド=(ハイバンド+ローバンド)÷2
(nは期間、一般的なデフォルトは20日です。)
例えば、20日間のドンチャンチャネルを描画するとします。現在の米ドル円が150円です。
過去20日間の最高値が160円、最安値が140円とすると、ハイバンドは160円で横ばい、ローバンドは140円で横ばい、ミドルバンドは150円で、現在価格がミドルバンドの150円のところで推移しているということになります。
ドンチャンチャネルは、価格が一定期間内の最高値や最安値をブレイクすることで、トレンドの発生を示唆すると考えます。価格がハイバンドの位置を上抜けると、上昇トレンドの開始を示唆し、ローバンドの位置を下抜けると、下降トレンドの開始を示唆します。つまり、ある一定期間の高値の位置や安値の位置を可視化するための計算式となっています。
売買サインはシンプルです。
買いサインは、価格がドンチャンチャネルの上限を突破した場合、上昇トレンド発生のシグナルとして買いサインとします。
売りサインは、価格がドンチャンチャネルの下限を突破した場合、下降トレンド発生のシグナルとして売りサインとします。
注意点としては、高値更新、安値更新のことをブレイクアウトといいますが、ブレイクアウト後に価格が逆行し、だましのブレイクアウトとなることもあります。
ドンチャンチャネル(パラメーター20本)
ここからは、ドンチャンチャネルの具体的な活用法を見ていきましょう。
ドンチャンチャネルでわかることは大きく分けて3つです。
チャネルの幅が広い場合は価格変動が大きく、チャネルの幅が狭い場合は価格変動が小さいことがわかります。つまり、チャネルの幅を見ることでボラティリティの大きさがわかるということです。
上昇トレンドであれば、ハイバンドが上向きで高値が切り上がっていきます。下降トレンドでは、ローバンドが下向きで安値が切り下がっていきます。つまり、チャネルの方向でトレンドの有無が一目で分かります。
ドンチャンチャネルが横ばいの場合は、支持線、抵抗線として意識されます。そのドンチャンチャネルをブレイクすることでトレンド発生を示唆します。
下の図で確認しましょう。ドンチャンチャネルの幅の違いでボラティリティの変化を感じ取ることができます。赤丸で2か所に印をつけていますが、ボラティリティの大きさが違うことが確認できます。また、ドンチャンチャネルが横向きか否かでトレンドの有無も確認することができます。
ドンチャンチャネル(パラメーター20本)
下の図は安定した上昇局面と安定した下降局面です。安定した上昇はハイバンドに沿って上昇します。ミドルバンドがサポートになっているのがわかります。安定した下降はローバンドに沿って下降します。ミドルバンドがレジスタンスになっているのがわかります。
ドンチャンチャネル(パラメーター20本)
では、具体的な活用法として2つ紹介します。一つ目は、大局的なトレンド転換を見抜く方法です。このドンチャンチャネルを表示することで、トレンド転換の状況が分かります。下降トレンドではローバンドに沿って下降します。それが、底打ちして上昇トレンドにトレンド転換する時には、予兆として必ずローバンドが横ばいになります。その後、ミドルバンドを上抜けていきます。ハイバンドも横ばいになります。上昇トレンドに転換するサインはハイバンドが右肩上がりになるところです。上昇トレンドができると、ハイバンドに沿って上昇します。上昇トレンドの終わりの予兆はハイバンドが横ばいになります。もちろん、そこから再度ハイバンドが右肩上がりになり、トレンドが継続することもありますが、トレンド転換の時は必ずハイバンドが横ばいになります。そして、ミドルバンドを下抜けてローバンドも横ばいになります。そして、ローバンドが右肩下がりになっていけば下降トレンド発生となります。順番が若干違う場合や、期間が短いケースもありますが、概ねこの順番で転換していきます。ですから、上昇トレンド中にハイバンドの横ばい期間が長くなってきたらトレンド転換を疑うことで、一手早い対応が出来るようになりますので、このトレンド転換の流れを覚えておきましょう。
ドンチャンチャネル(パラメーター20本)
もう一つの活用法としては、具体的な仕掛けと決済についてです。ドンチャンチャネルはトレンド発生を教えてくれる素晴らしいインジケーターではありますが、買いサインから売りサインを待って決済していたら利益が大きく減少すること多々あります。そこで、ドンチャンチャネルをより効果的に活用するのであれば、期間の違うドンチャンチャネルを2つ描画します。具体的には20日のドンチャンチャネルと10日のドンチャンチャネルを描画します。買いのケースでお話しします。仕掛けは20日の上抜けで買います。決済は10日ドンチャンチャネルを下抜ければ決済とします。こうすることで、ドンチャンチャネルの弱みであった決済を早く対応でき利益を伸ばすことができます。今回は20日と10日としましたが、40日で仕掛けとし、20日で決済とするなどカスタマイズしてみることで、その銘柄の特徴が見えてきますので、チャレンジしてみましょう。
ドンチャンチャネル(パラメーター20本と10本)
ドンチャンチャネルというインジケーターは過去n日間の高値と安値を結ぶというシンプルなものではありますが、その効用は非常に高く、奥が深い分析ができるのが特徴です。トレンド相場とレンジを一目で見極める事が出来、また、トレンド発生も教えてくれます。その発生したトレンドの状況も、ドンチャンチャネルを見ることで判断することができます。上昇トレンドが終われば必ずハイバンドが横ばいになります。下降トレンドが終わればローバンドが必ず横ばいになります。トレンドの発生やトレンドの終わりが見極められる。また、そのボラティリティもバンド幅の大きさで分かります。ドンチャンチャネルを活用して、トレンドを見極める力を高めていきましょう。
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チャート分析の第一人者としてセミナーで講師を務めるなど、教育活動を精力的に展開している人気講師。
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