FXのエンベロープとは?意味・計算式・使い方について

第25回

FXのエンベロープとは?意味・計算式・使い方について

口座開設を検討する人

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エンベロープは、相場の過熱感やトレンドの範囲を分析できるテクニカル指標です。トレンドの転換を判断する際にも役立つため、エンベロープを上手く活用できればFXで利益を狙いやすくなります。しかし、エンベロープを具体的にどう活用すれば良いのかわからない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、エンベロープの基本的な意味や計算式にくわえて、具体的な活用方法などをわかりやすく解説します。エンベロープを使いこなして精度の高いトレードを目指したい方は、ぜひ最後までチェックしてください。

1、FXにおけるエンベロープとは?

エンベロープとは、移動平均線にもとづいたトレンドフォロー型のインジケーターです。主に、トレンドの範囲や価格の過熱状態を判断するために使用されます。移動平均線は価格の平均を描画するため、上下する価格の中心に描画されます。一方、エンベロープは特定の移動平均線の上下に一定の乖離率でバンドを描き、その範囲内で価格が動いているかを確認することで相場の変化を捉える点が特徴です。

相場は、何度も上昇や下降をしながらトレンドを形成していきます。そして、トレンドが発生すると価格は移動平均線から乖離していくでしょう。その乖離がどれくらいになればトレンドが反転するのかという観点からチャートを見ているのが、エンベロープなのです。



   エンベロープ
(移動平均線20日、乖離率1.5%)

エンベロープ(移動平均線20日、乖離率1.5%)

エンベロープとボリンジャーバンドの違い

エンベロープと似ているインジケーターとして、ボリンジャーバンドがあります。どちらも移動平均線を中心にラインを表示するインジケーターとなっているため、一見、 同じような役割を持っているように見えるかもしれません。しかし、両者には大きな違いがあるため 、この違いをしっかりと把握して使い分けることが重要です。

まず、エンベロープは移動平均線を基準に、一定の乖離率を上下に設定して描かれます。この乖離はパーセンテージで表されるため、価格の変動に関係なく移動平均線から一定の幅を保ちます。一方、ボリンジャーバンドは移動平均線を基準に、価格の標準偏差によってバンドの幅が変動します。価格の変動が大きい場合にはバンドの幅が広がり、小さい場合には縮小するのが特徴です。

そのため、エンベロープはレンジ相場で有効とされており、ボリンジャーバンドはトレンド相場に向いているとされています。FXはレンジ相場が多い傾向にあるため、バンド幅が固定されているエンベロープは使いやすいインジケーターといえるでしょう。

2、FXにおけるエンベロープの計算式

エンベロープは2本のアッパー(上限)バンドとロワー(下限)バンドで構成されています。基本となる移動平均線から上下、それぞれどれだけ乖離しているかというものを見ていますので計算式は非常にシンプルです


エンベロープの計算式は以下のとおりとなっています。

アッパーバンド(上限バンド):移動平均線+移動平均線×n%
ロワーバンド(下限バンド):移動平均線―移動平均線×n%


*n%は移動平均線との乖離率となり、数値は任意に決めます。移動平均線は、単純移動平均線(SMA)を用いるのが一般的です。

例えば、20日移動平均線を基準に2%の乖離率で設定した場合、アッパーバンドは20日移動平均線に102%を掛けたもの、ロワーバンドは98%を掛けたものとなります。


(具体例)
  米ドル円:20日移動平均線(SMA)が153円とする。(2%の乖離率)
  アッパーバンド:153円+153円×2%=153円+3.06円=156.06円
  ロワーバンド:153円―153円×2%=153円―3.06円=149.94円



   エンベロープ
(移動平均線20日、乖離率2%)

エンベロープ(移動平均線20日、乖離率2%)

3、エンベロープの計算式の意味

エンベロープは、価格が移動平均線からどの程度離れているかを視覚的に示すことで、トレンドの強さや過熱状態を確認することができます 。移動平均線を計算し、その乖離率を上下2本の線で描画するため、移動平均線に対してどの程度乖離しているかによって描画されるエンベロープは変わっていきます。仮に、価格が概ねエンベロープ内に収まっていた場合、価格がアッパーバンドに接近または突破すると買われ過ぎと見なされ、価格がロワーバンドに接近または下抜けすると売られ過ぎだと判断できるでしょう。計算式自体はシンプルで、選んだ移動平均線に乖離率を掛けることで上部と下部のバンドを求めます。


なお、計算式からもわかるとおり、エンベロープには決まったパラメーターがなく、各社のアプリなどを見るとパラメーターはバラバラです。これには、メリットとデメリットの両方があります。エンベロープでは、通貨ペアもしくは同じ銘柄でも時期によって値動きの大きさが違うため、その銘柄や時期に合ったパラメーターを設定することになります。つまり、常にその銘柄の値動きの大きさを意識しつつ、移動平均線からどの程度乖離しているのかを考慮しながらチャートを見ることができる点がメリットです。これによって、インジケーターに任せきりの状態にならず、その銘柄の動きに敏感になることができるため、自分専用のインジケーターを作成できるようになります。


一方、自分専用のインジケーターを作成する作業は、個人投資家にとってかなりの労力が必要というデメリットがあります。任意で作ったパラメーターをそのまま使うと、値動きに合ったインジケーターを利用できないことを事前に理解しておきましょう。

4、エンベロープの基本的な売買サイン

エンベロープの計算式の意味でも解説しましたが、決まったパラメーターが無いという事は、設定によって売買サインは変わるという事が大前提としてあります。そのため、ここではエンベロープの基本的な考え方としての売買サインを解説します。


また、売買サインはトレンドに沿ってトレードする「順張り」という考え方と、高くなったら売って安くなったら買うという「逆張り」の2種類の考え方がありますので、それぞれ確認していきましょう。


(順張り)

買いサイン:価格がアッパーバンドを上に抜けた時
売りサイン:価格がロワーバンドを下に抜けた時


(逆張り)

買いサイン:価格がロワーバンドを下抜けた後、再度バンド内に戻る時
売りサイン:価格がアッパーバンドを上抜けた後、再度バンド内に戻る時



順張りにおいて価格がアッパーバンドを上抜けるという事は、上昇トレンドが発生したと考えられます。売りはその反対となります。つまり、価格がバンドに沿って動く間は、トレンドが持続していると判断し、そのトレンド発生のサインとなる、価格がバンドを抜けるところはサインとなります。しかし、バンドを超える動きが発生し、その後バンド内に戻る際に転換の可能性があると見ますので、逆張りのサインが発生します。


   順張りの売買サイン

順張りの売買サイン

   逆張りの売買サイン

逆張りの売買サイン

5、FXにおけるエンベロープの活用方法

エンベロープの活用方法として、単体での使用だけでなく他のトレンド系インジケーターと組み合わせることが効果的です。例えば、200日移動平均線と組み合わせることで長期的なトレンドを把握し、相場状況をより正確に把握できます。200日移動平均線が右肩上がりや右肩下がりとなっている時は、安定したトレンドがあると判断することが可能です。このような局面では、先ほどの順張り戦略が機能してきます。


一方、200日移動平均線が横ばいで価格がその前後で推移している時はトレンドが無いとこを示唆しています。つまり、このような局面では逆張り戦略が機能してきます。このように、200日移動平均線を入れることで、トレンド相場とトレンドが無い相場での戦略を変えることができ、エンベロープをより深く活用することができるでしょう。


また、200日移動平均線と組み合わせることで、価格からの乖離率設定も調整しやすくなります。トレンド相場は相場の勢いがあり、ボラティリティ(価格変動)が大きくなりやすいために、乖離率を大きく設定することで機能性が高くなります。一方、トレンドが無い相場はボラティリティが小さくなるため、乖離率を小さくすることで機能性を高めることが可能です。下記のチャートは米ドル円(日足)とユーロ米ドル(日足)になります。


米ドル円は200日移動平均線に傾きがあり、トレンドが発生していることがわかります。順張りが効果的でボラティリティも大きいので乖離率は2%です。一方、ユーロ米ドルは200日移動平均線が横ばいになっているため、トレンドが無いこと分かるでしょう。逆張りが効果的で、ボラティリティが小さいので1.2%に設定しています。


   米ドル円
(移動平均線20日、乖離率2%)

米ドル円(移動平均線20日、乖離率2%)



   ユーロ米ドル
(移動平均線20日、乖離率1.2%)

ユーロ米ドル(移動平均線20日、乖離率1.2%)

仮にユーロ米ドルの乖離率を米ドル円と同じ2%するとどうなるかも確認しておきましょう。売買サインが一つも出てこない状況となります。



   ユーロ米ドル
(移動平均線20日、乖離率2%)

ユーロ米ドル(移動平均線20日、乖離率2%)


このように、通貨ペアや時期によって乖離率を変えつつ、トレンドの方向性や強弱を感じ取りながらエンベロープを活用していきましょう。


6、FXのエンベロープを設定する方法

エンベロープの活用方法が理解できたら、実際にエンベロープを設定してみましょう。MT4・MT5の場合は、基本的にどちらも同じ方法で設定することができます 。


まず、上部のメニューから「挿入」をクリックして「インディケーター」→「トレンド系」→「Envelopes」と選択していきます。こちらを選択すると、エンベロープの期間や偏差を設定する画面が出てきますので、変更したい項目があれば自由に設定可能です。


次に、エンベロープを追加した際と同じ流れで移動平均線も表示します。上部の「挿入」から進み、「Moving Average」を選択しましょう。移動平均線を何日で設定するのかが大切なポイントとなりますが、小次郎講師流で利用したい場合は「20日」で設定してみてください。


エンベロープと移動平均線がチャート上に表示されていれば、設定は完了です。もし、エンベロープと移動平均線の乖離が一定になっていない場合は、設定ミスの可能性があるため再度確認しましょう。

7、FXでエンベロープを活用する際の注意点

エンベロープを活用することでトレンドの状態を把握しやくなりますが、以下のような注意点もあります。


●トレンド相場では有効に機能しない場合がある
●バンドを抜けたとしても必ず移動平均線に戻るわけではない



エンベロープを利用してトレードを行う前に、注意点と対策をしっかり確認しておきましょう。

トレンド相場では有効に機能しない場合がある

エンベロープは移動平均線の中心から一定の幅で推移するため、基本的にレンジ相場で有効なインジケーターです。そのため、価格の落差が激しいトレンド相場では有効に機能しない場合があります。特に、要人発言や重要な経済指標が発表されたタイミングなど、大きなトレンドが発生しそうな場合はエンベロープの利用を控えたほうが無難といえるでしょう。


バンドを抜けたとしても必ず移動平均線に戻るわけではない

エンベロープの基本的な売買サインとして、価格がバンドを抜けたタイミングがひとつの目安になることは説明しました。しかし、価格がバンドを抜けたとしても、必ず移動平均線まで戻ってくるとは限りません。価格がエンベロープに張り付いた状態から、そのままトレンド相場になる可能性もあります。エンベロープは、相場が想定外の動きをする場合もあるという点に留意したうえで活用してください。


上記のようなリスクも考えられるため、トレードを行う際はあらかじめ損切りラインを設定しておくことが大切です。また、エンベロープ単体では不安な場合は、他のインジケーターも組み合わせることをおすすめします。

8、エンベロープと併用したいインジケーター

エンベロープは、200日移動平均線などのトレンド系インジケーターと組み合わせるのが効果的なことは解説しました。ここでは、その他に相性の良いインジケーターを紹介します。


●ストキャスティクス
●RSI



それぞれ解説していきますので、エンベロープを使ってトレードの精度を上げたい方はぜひ参考にしてください。


ストキャスティクス

ストキャスティクスとは、相場の「買われ過ぎ」や「売られ過ぎ」を判断できるテクニカル指標です。エンベロープでトレンドの方向性を分析しつつ、ストキャスティクスで相場の過熱度を判断することができれば、より強い根拠を持ってエントリーすることができます。


また、エンベロープだけでは価格が反発するか判断が難しい場合に、ストキャスティクスでも反発のサインが出ていれば、エントリーポイントを正確に見極めることができるでしょう。


RSI

RSI(Relative Strength Index/相対力指数)は、相場の過熱度を判断できるテクニカル指標です。一定期間における価格の上昇幅・下落幅にもとづき、0~100%の数値で相場の過熱度を表します。数値が70%以上であれば買われ過ぎ、30%以下なら売られ過ぎと判断するのが一般的です。


RSIとストキャスティクスは似ていますが、計算式や表示されるラインの数が違うため、売買サインが現れる頻度も異なります。どちらもエンベロープと相性が良いテクニカル指標となっているため、自分のトレードスタイルに合う方法を選んでみてください。

9、エンベロープだけでなく他のインジケーターと組み合わせることが重要

エンベロープは移動平均線をベースにしたトレンドフォロー型インジケーターであり、特定の乖離率で移動平均線の上下にバンドを描画することで、価格の過熱状態やトレンドの範囲を確認するために使用されます。基本的な計算式はシンプルですが、カギは移動平均線を何日にするか、その乖離率をどうするかという問題です。小次郎講師流であれば、移動平均線は20日を推奨します。


また、エンベロープの効果を最大化するためには、200日移動平均線などのトレンド系インジケーターと組み合わせることが重要です。大局的な相場の流れを確認しつつ、乖離率の微調整ができます。ボラティリティに応じて乖離率を調整しながら、マーケットの流れに柔軟に対応する力を身につけましょう。

当コンテンツは為替相場等に関連する一般的な情報の提供を目的としたコラムです。特定の投資方法等を推奨するものではなく、また投資の勧誘を目的とするものでもありません。
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小次郎講師直伝「チャートの極意」

小次郎講師(手塚宏二)

小次郎講師(手塚宏二)

チャート分析の第一人者としてセミナーで講師を務めるなど、教育活動を精力的に展開している人気講師。
🔗 小次郎講師(手塚宏二)について

資格等

日本テクニカルアナリスト協会
認定テクニカルアナリスト

書 籍

 『小次郎講師流 目標利益を安定的に狙い澄まして獲る 真・トレーダーズバイブル―Vトレーダーになるためのツール作り』
 『移動平均線 究極の読み方・使い方』
 『小次郎講師流テクニカル大全』

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