第12回
DMIとADXは、トレンドの発生や強弱にくわえて、トレンドフォローシステムとしても使われるテクニカル指標です。DMIとADXは非常に有用なテクニカル指標ですが、上手く使いこなす方法がわからない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、DMIとADXに関する基礎知識や使い方などについて詳しく解説します。DMIとADXを有効活用することができれば、FXで継続的に利益を狙うことも可能です。ぜひ本記事を参考にしながら、DMIとADXの使い方をマスターしていきましょう。
DMIとはDirectional Movement
Indexの略で、方向性指数と訳されたりします。J・ウエルズ・ワイルダー・ジュニアが1970年代半ばに開発したトレンドの強弱をはかるテクニカル指標です。
ADX(Average Directional Movement Index)は本来DMIの中のひとつの線だったのですが、近年ADXの方が有名になり、MT4ではAverage Directional Movement
Indexという名前でDMIが用意されています。
機械工学を学び、機械の設計に携わり、不動産業で成功した後、先物市場に参入しました。その後、トレンドリサーチ社を経営し、トレーダー兼テクニカル分析の研究開発者として大成功しました。
近代のテクニカル分析を完成させた人物として有名で、RSI、パラボリック、DMI、PIVOT、等、多数の有名なテクニカル指標をたった一人で開発しました。
オシレーター系のテクニカル指標でありながら、トレンドフォローシステムとして使われることが一般的です。トレンドの発生を見つけ出すだけでなく、そのトレンドに乗って成功するかどうかという状況も分析出来るところが特徴。そのため、他のテクニカル指標を使うときにも、併用されることが多い指標です。
ADXはDMIの中に含まれた指標ですが、最近は独立してADXというテクニカル指標として使われるケースも多くなってきました。
DMIには、+DI、-DI、そしてADXインジケーターの3つの線が含まれています。。+DI、-DIはそれぞれ買い勢力と売り勢力の強さを示し、ADXインジケーターはトレンドの強さを示す重要な指標です。これらの線を通じて、トレーダーは市場の動きをより詳細に分析し、適切な取引戦略を立てることができます。
+DI・・・買い勢力の強さを表す指標
-DI・・・売り勢力の強さを表す指標
ADX・・・トレンドの有無と強さを表す指標
つまり+DIが-DIより上にあればあるほど買い勢力が強いことを示し、-DIが+DIより上にあればあるほど売り精力が強いことを示します。両方が拮抗しているとき、どちらの数値も低いときは、もみあい相場であることを示しています。
+DIが-DIの上にあれば上昇トレンドの発生が想定されます。-DIが+DIの上にあれば下降トレンドの発生が想定されます。
それを裏付けるのがADXです。ADXが上昇していれば、上昇トレンド・下降トレンドが継続していることを表します。ADXが下降している場合は上昇トレンド・下降トレンドの終了を意味します。
※+DM=本日の高値-昨日の高値
※-DM=昨日の安値-本日の安値
基本は上の式ですが、条件がいくつかあり。
条件1、+DM<0の時は+DM=0、-DM<0の時は-DM=0
条件2、+DM>-DMの時は-DM=0、-DM>+DMの時は+DM=0
※前日の終値-本日の安値=Bとする。
※本日の高値-本日の安値=Cとする。
TR=MAX(A,B,C) ・・・TRはABCの中の最大値
※+DI=(N日間の+DMの合計/N日間のTRの合計)×100
※-DI=(N日間の-DMの合計/N日間のTRの合計)×100
※通常Nは14を採用。Nは本来変更可能なパラメーターですが、ワイルダーは14という数字をハーフサイクルとして重要視しており、さまざまなワイルダーのテクニカル指標は14で固定されることが多いようです。
※DX=|(+DI)-(-DI)|/{(+DI)+(-DI)}×100
※ADX=DXのN日平均
DMIは見方がわかりやすい指標でありながら計算式で説明するとややこしく感じます。しかし、意味合いだけはしっかりと理解してください。1日の上昇エネルギーを示す数値を+DMと呼び、下降エネルギーを示す数値を-DMと呼びます。
この上昇エネルギーを示す数値とは基本的に、前日の高値より本日の高値が更新した幅を言い、下降エネルギーを示す数値とは、前日の安値より本日の安値が更新した幅のことを言います。はらみ線のように高値も安値も更新した場合はその数値の大きい方を採用します。
一日の最大の値動きをTRと呼びますが、最大の値動きは「本日の高値と前日の終値の差」「本日の安値と前日の終値の差」「本日の高値と本日の安値の差」のうち最大のものを選びます。
買い勢力の強さを表す+DI?は14日の中で+DMが全体の値動きの中で何%であったかで数値化します。売り勢力の強さを表す-DIは14日の中で-DMが全体の値動きの中で何%であったかで数値化します。
トレンドの強さを示すADXは+DI(買い勢力の強さ)と-DI(売り勢力の強さ)の差だと思えばほぼ正しい認識です。(※実際にはその差を+DIと-DIの合計で割ります。)
ここからは、実際にDMIとADXを使用して相場の分析を行っていきます。
●+DI・-DIによる分析
●ADXによる分析
●総合分析
それぞれ解説していきますので、先述したDMIとADXが示す意味合いなどを考えながら分析していきましょう。
上図は+DIと-DIだけを表示しています。+DIが上にある局面が上昇トレンド、-DIが上にある局面が下降トレンドというのがよくわかります。また+DIと-DIが頻繁に上下を入れ替えているのがもみあい期です。
売買シグナルとしては+DIが-DIを上回ったところが買いサイン、-DIが+DIを上回ったところが売りサインということになりますが、もみあい期には騙しとなります。そこで登場したのがADXというわけです。
こちらは前回の図にADXを加えたものです。ADXはトレンドの有無と強さを示す指標。+DIと-DIの上下関係で、どちらの勢力が強いかを分析し、その後それがトレンド形成につながっているかをADXで確認します。
但し、ADXは上昇トレンドか下降トレンドかは関係なしです。上昇であろうと下降であろうとトレンドがあれば上昇し、トレンドが勢いを無くせば下降していきます。それゆえ、+DI、-DIと同時に見る必要があります。
+DIが-DIの上にあってADXが上昇しているなら買い。
-DIが+DIの上にあってADXが上昇しているなら売り
トレンド発生やトレンドの強弱を見極める際に有効なDMI・ADXですが、以下のような注意点もあります。
●最適なパラメーターを検討する必要がある
●レンジ相場には適していない
●実際の値動きとタイムラグがある
●ダイバージェンスが発生したら注意
それぞれ解説していきますので、DMI・ADXを活用する前に必ずチェックしておきましょう。
先述のとおり、+DI・-DIやADXのパラメーターは、基本的に14で設定します。ワイルダー氏はハーフサイクルとして14という数字を重要視しており、開発した他のテクニカル指標でもデフォルトで設定されていることが多いです。
しかし、どんな状況でも14の数値が最適とは限りません。成果に結びついていない場合は、状況に合わせてパラメーターを調整し、最適な数値を検討する必要があるのです。
なお、相場の状況によって異なりますが、ADXの数値は20~25程度を基準に設定するのが一般的とされています。ADXの数値を高めに設定すると、トレンドへの乗り遅れが発生してしまう可能性がありますが、騙しが発生するリスクを抑えることができます。
基本的にはデフォルトの設定で利用し、状況によって最適なパラメーターを見つけられるよう試行錯誤していきましょう。
DMI・ADXは、トレンド発生やトレンドの強弱を測ることで、順張りトレードで利益を狙う際に用いられることが多い指標です。一方、トレンド系のテクニカル指標であるDMI・ADXは、レンジ相場では有効に機能しづらいというデメリットがあります。
レンジ相場でDMIやADXを利用するとエントリーポイントがわかりづらいため、レンジ相場に適した他のテクニカル指標も活用していきましょう。
DMI・ADXは、値動きが発生した後に売買サインが発生するため、実際の値動きとのタイムラグがあります。そのため、DMI・ADXのサイン発生と同時にエントリーしたとしても、数pips〜数十pips程度遅れてしまう場合があることを念頭に置きましょう。
値幅が大きい場合、エントリーが数分遅れるだけで損害が大きくなるため、しっかり理解しておく必要があります。DMI・ADXを初めて利用する場合は、USD/JPYなど、値動きが比較的ゆるやかな相場で慣れておくといいでしょう。
DMI・ADXを利用してトレードを行っていると、チャートは上昇しているにも関わらず、ADXの数値が下降しているという状況が発生する場合があります。これはダイバージェンスと呼ばれる現象で、トレンドが終了することを意味するサインです。
ダイバージェンスが発生したらトレンドが転換するため、ポジションを持っている場合は撤退を検討する必要があります。なお、ダイバージェンスを確認できた場合は、逆張りで利益を狙うことも可能です。ただし、順張りに比べてリスクの高い手法なため、損切りの基準は決めておきましょう。
DMIとADXは、RSIやMACDなどと同様に、チャートの下にサブ画面が表示されるオシレーター系のテクニカル指標です。しかし、活用する場面には違いがあるため、しっかり理解しておく必要があります。
RSIやMACDは「買われすぎ」や「売られすぎ」など、相場の過熱度を測ることに向いているため、逆張りトレードと相性が良いです。そのため、トレンド相場だけでなく、レンジ相場でも活用できるという特徴があります。
一方、DMIとADXはトレンドの発生や強弱にくわえて、そのトレンドに乗ることで利益を狙えるかを分析します。つまり、DMIとADXは順張りトレードと相性が良いという違いがあります。また、DMIはレンジ相場ではあまり機能しないため、トレンド相場で活用することが多いテクニカル指標です。
このように、同じオシレーター系のテクニカル指標であっても、相場によって使い方は異なります。トレンド発生から順張りトレードで利益を狙うならDMI・ADX、トレンド終盤やレンジ相場で逆張りトレード狙いならRSIやMACDなど、状況に応じて使い分けることが重要といえるでしょう。
先述のとおり、DMI・ADXは順張りトレードに向いている指標であり、逆張りやレンジ相場での活用にはあまり向いていません。しかし、他のテクニカル指標と併用することで、逆張りトレードでも活用することが可能です。
例として、オシレーター系のテクニカル指標であるRSIとの組み合わせについて解説します。
まず、ADXによってトレンド相場とレンジ相場のどちらなのかを分析します。レンジ相場だった場合、RSIで「買われすぎ」「売られすぎ」といった相場の過熱度を測り、逆張りトレードで利益を狙う手法です。
今回はADXとRSIを以下の数値で設定したとします。
●RSIが70以上で買われすぎ・30以下で売られすぎ
●ADXが25以下でトレンド終了
この場合、RSIが30以下かつADXが25以下であれば買いでエントリーし、RSIが70以上でADXが25以下であれば売りでエントリーします。このように、ふたつの数値をもとに判定すれば、トレードの精度を高めることができるでしょう。
数々の優れたテクニカル指標を生み出したJ・ウエルズ・ワイルダー氏がこの指標のことをこう書いています。
「DMIは私が生涯で最も魅力を感じた研究である。この概念を数値で表すことに成功したことが私の人生の最大の成果だ。」
また、テクニカル分析研究家の第一人者チャールズ・ルボー氏(「マーケットのテクニカル秘録」著者)は著書の中でこう言っています。
「ADXを正しく読み取ることが出来れば儲かる相場を見つけられる確率は大きく上がるだろう。これは極めて応用範囲の広い非常に有効な指標である。結論としてあらゆるテクニカル指標の中でADXは最も使える指標である。」
特に近年ADXの人気が高いのです。テクニカル指標の中にはトレンド発生時に有効なトレンド系の指標(移動平均線等)ともみあい相場時に有効なオシレーター系の指標とがあります。
しかし、現在がトレンドのある時期なのか、もみあい期なのかがなかなか判別が難しいものです。それを判別するほとんど唯一のテクニカル指標がADXですから、人気が高いのも頷けます。
今回は、DMI・ADXに関する基礎知識や使い方、注意点などについて解説しました。DMI・ADXは比較的マイナーですが、開発者のワイルダー氏が「人生最大の成果」と表現するほど優れたテクニカル指標です。トレンドの発生や強弱にくわえて、トレンド相場・レンジ相場の判別まで分析することができます。
DMI・ADXを使いこなすことができれば安定感のあるトレードを実現することができ、FXで継続的に利益を狙うことができるでしょう。ぜひ本記事を参考にしながら、DMI・ADXを用いたトレードを取り入れてみてください。
当コンテンツは為替相場等に関連する一般的な情報の提供を目的としたコラムです。特定の投資方法等を推奨するものではなく、また投資の勧誘を目的とするものでもありません。
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チャート分析の第一人者としてセミナーで講師を務めるなど、教育活動を精力的に展開している人気講師。
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