パラボリックとは?パラボリックSARの手法と使い方・見方について

第17回

パラボリックとは?パラボリックSARの手法と使い方・見方について

口座開設を検討する人

まずは、
口座開設から始めましょう!

口座開設を検討する人

パラボリックとは 、FX取引においてトレンドの状況や転換などを見極めるために使用されるテクニカル指標のひとつです。チャート上のポイントと価格の位置関係を確認することによって、トレンドの状況や売買のタイミングが視覚的に把握しやすいため、FX初心者の方にもおすすめの指標です。また、他のテクニカル指標と組み合わせることで分析の精度を上げることもできます。

本記事では、パラボリックに関する基礎知識や計算式、パラボリックSARの手法や使い方などについて詳しく解説します。パラボリックは、特にトレンドフォローの際に役立つ指標であり、市場の動向を見極めるための有効なツールとなっておりますので、基礎知識や活用方法をしっかり学んでおきましょう。

1、パラボリックとは

パラボリック(Parabolic)はRSIやDMIの考案者であるJ.W.ワイルダー氏によって考案されたインジケーターです。パラボリックの最初の記述は1978年の「ワイルダーのテクニカル分析入門」になります。

パラボリックの基本的な考え方は、常に買いか売りかのポジションを持つ「どてん(途転)」システムという点に特徴があります。ここで、途転という言葉の説明をしておきます。通常は買ったポジションが天井を打ったと思えば、決済してポジションが無くなり、そこから価格が下がると思えばそこで売りポジションを持ちます。ところが、この途転という考え方は、天井を打ったと思えば買っているポジションを決済し、同時に売りポジションを持ちます。そして、底を打ったら、今度は売りポジションを決済して買いポジションに入れ替えて、常にポジションを持ち続ける手法のことで、これを途転と呼びます。

そして、パラボリックとは「放物線」という意味になり、SAR(ストップ・アンド・リバース)という指標を使用して、相場のトレンド転換を見るトレンドフォロー型のテクニカル指標となります。

パラボリック

2、パラボリックの計算式

(計算式)

 当日のSAR=前日SAR+加速因数×(新値―前日SAR)

*SAR(ストップ・アンド・リバース)とは、売買転換点を示すポイントのことです。チャートには、黒い点で表示されています。

新値:上昇相場では、そのトレンドの新高値、下降相場ではそのトレンドの新安値のこと

加速因数:一般的には初期値として0.02とし、終値が高値を更新するたびに+0.02ずつ加算され、上限は0.2までとなる。(ここでは、初期値を0.02とし、加速は+0.02、上限は0.2とする)

*上昇相場から下降相場に移行する際の最初のSARは転換前の最高値、下降相場から上昇相場に移行する際の最初のSARは転換前の最安値となる。

3、計算式の意味

下降トレンドが終わり、上昇トレンドが始まったとしてこの計算式の意味を考えてみましょう。

一番初めのSARは直近の最安値となり、転換したところに点が描画されます。最安値は1000円とすれば、1100円のところで転換したとすれば1100円の下に1000円の位置に「・」(もしくは「★」など)で描画されます。次に加速因数は終値ベースで高値を更新すれば最安値から高値更新した値幅に2%を掛けます。新値が1100円となれば、100円幅の上昇となりますので、100円×0.02=2となり、2円を最安値に足します。よって、SARは1000円+2円=1002円です。これが、次のSARとなります。次の日も100円上昇して1200円になれば、今度は0.02に+0.02を足した0.04(つまり4%)を掛けます。100円×0.04=4円となり、SARは1002円+4円で1006円となります。次に新値を取れば0.06、次は0.08と掛けていき、最大0.2、つまり動いた値幅に最大20%を掛けた数値を前日のSARに足していくというものです。

この計算式の最大の特徴は、価格が上昇を続ける限り、ローソク足に遅れて追随し、ローソク足を追い抜くことは無いという事です。トレンド相場が続く限りSARはローソク足にくっつく事なく後を追いかけていきます。勿論、相場は上がり続けることはありませんので、どこかで価格が反転します。そうすると、時間の経過と共にSARは放物線を描きながらローソク足に近づいていきますので、ローソク足がSARにクロスすれば、トレンドが終わったといいう判断されるという意味が計算式には表現されています。はじめは動いた値幅の0.02(2%)から始まり、最後は0.2(20%)にすることでローソク足の後ろを放物線上に追随する形が出来上がるのです。

つまり、はじめは0.02から始まり、次は0.04、0.06・・・・0.2となることで、価格変動という縦軸に加えて、時間が経過すればするほど掛ける数値が高くなると横軸の概念が組み込まれているのです。価格変動という概念と時間の概念が組み合わさっているというのが、パラボリックの計算式の最大の特徴といえるでしょう。

チャート

4、パラボリックのパラメーター調整

パラボリックは、チャートソフト上でパラメーターを調整できることが多いのが特徴です。パラボリックの加速因数に関するパラメーターには初期値・最大値・増加量があり、この数値を調整することによってパフォーマンスを最適化することができます。

これらの加速因数は、設定値が低すぎるとタイミングが遅れてしまいます。一方、設定値が大きすぎるとダマシ(予想と逆方向にチャートが動くこと)が発生しやすくなるため注意が必要です。

例えば、デフォルトのパラメーターが初期値「0.02」最大値「0.2」増加量「0.02」だったとします。そして、パラメーターを初期値「0.01」最大値「0.2」増加量「0.01」に変更した場合、ダマシは少なくなって SARの推移も緩やかになるでしょう。しかし、デフォルトの設定よりもトレンド転換のシグナルが点灯するタイミングが遅くなってしまうのです。

なお、パラボリックの最適なパラメーターは個人のスキルや市場の状況などによって異なります。初心者の方は、デフォルトの設定で使い始めるのが無難といえるでしょう。パラボリックのパラメーターを調整したい場合は、トレード結果の分析やバックテストを繰り返し、最適な設定を探求することが重要です。

5、基本の売買サイン

パラボリックは、通常、上昇トレンドの場合はローソク足の下にSARがあり、下降相場の場合はローソク足の上にSARがあります。そして、上昇相場においてローソク足がSARを下抜ければ売りサイン、下降相場においてローソク足がSARを上抜ければ買いサインとされています。

なぜ、それが基本の売買サインとされているかというと、SARは時間の経過と共に、ローソク足に放物線を描きながら接近していきます。しかし、上昇が続く限りは接することはありません。そのローソク足がSARとクロスしたという事は、上昇トレンドの場合は下降トレンドへ、下降トレンドの場合は上昇トレンドへ変化しというサインだからこそ、そこが売買サインとなっているのです。そして、そのサインが出ている間は、ポジションを持ち続けるという途転システムとなっています。

では、この途転システムのメリットとデメリットを見ていきましょう。メリットは、常にポジションを持つことで、予期せぬ大相場が到来してもチャンスを逃さないということでしょう。一方で、デメリットとしては、もみ合い相場の時は常にサインがコロコロ変化することで損切りの山となることです。

6、パラボリックのメリット・デメリット とは

パラボリックのメリット

トレンドの状況を視覚的に把握できる

パラボリックは、チャート上にポイントが放物線上に描かれるため、トレンドの状況や転換点が視覚的に分かりやすい点がメリットです。トレンドの方向性が直感的に把握しやすくなり、描かれた放物線(SAR)が価格と交差するポイントが売買の転換点となります。トレンドの状況を迅速に把握できる点は、非常に大きなメリットといえるでしょう。
また、パラボリックはトレンドの状況を把握できるだけでなく、トレンドの強さも確認することが可能です。これはSARの間隔をチェックすることで把握することができ、間隔が広い場合は現在のトレンドを追っても問題ない傾向にあります。一方、ポイントの間隔が徐々に狭くなってきた場合は、トレンドの転換点が近づいているサインです。
このようにパラボリックを活用することができれば、価格変動に惑わされることなく、安定したトレードを実現することができるでしょう。

トレードのタイミングを早期に予想できる

パラボリックを活用することで、トレードのタイミングを比較的早い段階で予想することができます。SARと価格の位置関係をしっかり分析すれば、トレンドの転換点を把握することが可能です。これによって利益の上昇を狙いつつ、損失も最小限に抑えることができるでしょう。

明確なトレンドが発生している場合は非常に有効

パラボリックは、長期間のトレンドを追いかけるのに適したトレンドフォロー型の指標です。トレンドが明確に出ている場合、パラボリックは非常に有効であり、トレンドが続いている間はその方向に沿った売買を行うことで利益を上げることが可能です。明確なトレンドがある市場環境において、利益を狙いやすい点はメリットといえるでしょう。

比較的簡単に利用できる

パラボリックは、多くのプラットフォームで利用することができます。トレンドの転換点や売買のタイミングも視覚的に把握しやすく、設定も比較的簡単です。そのため、トレード初心者から上級者まで、幅広い方が活用しやすい指標となっています。

パラボリックのデメリット

レンジ相場ではダマシが多くなりやすい

パラボリックは、長期間にわたってトレンドの方向性が定まっている場合に最も効果を発揮する指標です。一方、短期間で価格が動いているレンジ相場の場合、ダマシが多くなってしまうデメリットがあります。トレンドが発生していない状況でもトレンド転換のシグナルを出す場合があるため、レンジ相場の場合は他のテクニカル指標と併用して分析するようにしましょう。

過去のデータに依存してしまう

パラボリックのデメリットとして、過去のデータに依存する点もあげられます。パラボリックは、過去の価格データにもとづいてトレンドの転換点などを予測するため、急な市場変動や予期せぬ事態に対応しきれない場合があるのです。これによって市場の状況に適応できず、誤ったシグナルが発生するリスクがあります。

パラボリック単体では信頼性が低い場合がある

パラボリックは一目でトレンドの転換や売買のタイミングを確認できますが、パラボリック単体での分析は信頼性が低い場合があります。そのため、他のテクニカル指標と組み合わせて、トレンドの方向性や強弱を確認しながらトレードを行うことが重要です。市場の状況によって、適切なテクニカル指標の組み合わせやパラメーターの設定を検討しましょう。

7、パラボリックの活用方法

パラボリックをより使いやすくするための活用法を解説していきます。やはり、途転システムで売買すると、もみ合い相場ではロスカットが続き損失が膨らみます。トレードをする所を絞り込むことでパラボリックの良さが出てきます。もう一度確認しましょう。パラボリックはトレンド追随型のインジケーターでした。ということは、トレンド系のインジケーターと組み合わせることでパラボリックの良さを引き出すことができます。そこで、パラボリックと共に、移動平均線というトレンド系のインジケーターを描画します。ここでは、200日移動平均線を活用します。  

200日移動平均線は、ダウ理論を提唱したチャールズ・ダウ氏が使っていた移動平均線としても有名で、約1年の平均線となりますので大局の流れを見ることができます。この200日移動平均線の動きを見れば大局の動きがわかります。200日移動平均線が右肩上がりの時は、大局は上昇トレンド、右肩下がりの時は、大局は下降トレンド、200日移動平均線が横ばいの場合は、大局がもみ合い相場になっているという事を示しています。200日移動平均線が右肩上がりの時は、大局が上昇トレンドであることを示していますので、買いを中心にトレードします。よって、パラボリックの買いサインが出た時にトレードをします。売りサインが出た時は慎重に対応し、場合によっては売りをしないという考え方も有効です。慎重に対応するという事は、取引量を少なくするとか、仕掛けてからチャートを見る回数を増やすという事です。一方で、200日移動平均線が右肩下がりの時は、大局が下降トレンドであることを示していますので、売りを中心にトレードします。よって、パラボリックの売りサインが出た時にトレードするのです。そうすることで、流れに逆らったトレードを減らすことで精度を上げることができます。  

では、この図のように直近の200日移動平均線が横ばいの場合はどうすればよいでしょう。一つは、200日移動平均線が横ばいの場合はトレードを休むという考え方が出てきます。200日移動平均線が横ばいになっているという事は、トレンドが無いという事を示唆していますので、無理にトレードをせずに「休むも相場」でトレードを休憩し、上下どちらかのトレンドが出るのを待ちましょう。一方で、上級者は、トレンドが無いという事を逆手にとって、200日移動平均線に価格が接近し下降するところでのパラボリックの売りサインが出たところ、200日移動平均線に価格が接近し上昇するところでのパラボリックが買いサインが出たところを仕掛けます。そして、そのもみ合いの値幅の利益を狙います。ただし、これは上級者向けですので、慣れていない方はトレードを休み、横ばいになっている200日移動平均線が上下どちらかに動き出したときに、その方向に追随するトレンドフォローでトレードしましょう。

パラボリック

また、パラボリックは加速しながらローソク足を追いかけていくトレンド追随型のインジケーターですので、上級者は、トレーリングストップにパラボリックを活用します。では、トレーリングストップとは何かを解説しておきます。例えば買いポジションを持っていて、上昇トレンドが発生すると利益が増えてきます。しかし、どこかでトレンドは終わりますので、利益確定売りの逆指値注文を事前に出しておくという手法です。これをパラボリックの動きに合わせてトレーリングストップを引き上げていくのです。

図を見ながら解説します。下降から上昇に切り替わったことで、パラボリックの買いサインが出ましたので買いを仕掛けました。ロスカット(損切注文)を最初のSARに出します。最初のSARはその時の最安値の価格です。そして、SARの上昇と共にロスカットを引き上げていき、買った価格を超えてくると、そこからは損切りではなく、利益確定(利確)の逆指値注文になります。そして、しばらく上昇が続いた後に、陰線が出現しSARが価格とクロスして売りサインが出現する同時に、利確の逆指値がヒット(約定)します。こうしておくことで、トレンドがある限りは利益を伸ばすことができ、トレンドが終われば素早く決済することができるのです。こういったパラボリックの活用法もありますので、パラボリックを正しく理解して活用しましょう。

トレーリングストップの図

8、まとめ パラボリックは他の指標と組み合わせて活用すると効果的

今回は、パラボリックに関する基礎知識や使い方にくわえて、メリット・デメリットや活用方法などについて解説しました。パラボリックは一目でトレンドの状況やトレンド転換を確認することができ、SARと価格が交差する部分が売買のポイントとなります。しっかりとトレンドが発生している場合は利益を狙いやすいため、非常に有効な指標といえるでしょう。
ただし、パラボリックはレンジ相場に弱いため、短期間で細かく価格が上下している場合は注意が必要です。パラボリックを活用する際は、状況に合わせて他の指標も併用しながら判断することをおすすめします。ぜひ本記事を参考にしながら、パラボリックを活用してみてください。

当コンテンツは為替相場等に関連する一般的な情報の提供を目的としたコラムです。特定の投資方法等を推奨するものではなく、また投資の勧誘を目的とするものでもありません。
コンテンツの内容につきましては万全を期すよう管理しておりますが、その正確性や普遍性を当社や執筆者が保証するものではありません。記載内容に因り万が一損失が発生した場合においても、当社及び執筆者は一切の責任を負うことは出来ませんので、ご了承のうえでご参照ください。
当コンテンツの無断転用や再配布は固く禁じます。

小次郎講師直伝「チャートの極意」

小次郎講師(手塚宏二)

小次郎講師(手塚宏二)

チャート分析の第一人者としてセミナーで講師を務めるなど、教育活動を精力的に展開している人気講師。

資格等

日本テクニカルアナリスト協会
認定テクニカルアナリスト

書籍

 『小次郎講師流 目標利益を安定的に狙い澄まして獲る 真・トレーダーズバイブル―Vトレーダーになるためのツール作り』
 『移動平均線 究極の読み方・使い方』
 『小次郎講師流テクニカル大全』

小次郎講師(手塚宏二)について🔗

口座開設を検討する人

まずは、
口座開設から始めましょう!

口座開設を検討する人