第8回
ボリンジャーバンドは、米国のテクニカルアナリストであるジョン・ボリンジャー氏が考案したテクニカル指標で、トレンドの変化や方向性を確認することができます。ボリンジャーバンドを上手く活用できれば、トレンドの転換を見極めて利益を狙うことが可能です。しかし、ボリンジャーバンドを実際にどう活用すればいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ボリンジャーバンドの見方や基本的な手法などについて詳しく解説します。また、ボリンジャーバンドの重要な売買サインであるバンドウォークについても紹介しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
前回、お話しましたが、ボリンジャーバンドには3つの要素が含まれています。ということはその3つの要素を使って分析するのがボリンジャーバンドの正しい分析法です。
3つのうちひとつは20日移動平均線。これはすぐにわかりますね。ミッドバンドのことです。2つめは標準偏差、これはバンド幅を見ることによってわかります。
バンド幅とはバンド上限からバンド下限までの幅のことを言います。
バンド上限とは+2シグマの位置を言い、バンド下限とは-2シグマの位置を言います。
とするとバンド上限からバンド下限までの幅は標準偏差×4となります。
標準偏差とはばらつきの大きさを表すもの。ボリンジャーバンドにおいては20日間の値動きの大きさを表します。つまりボラティリティです。そして、現在、標準偏差が広がっているのか縮小しているのかはバンド幅を見ればわかります。標準偏差が大きくなればバンド幅広がり、標準偏差が小さくなればバンド幅が狭くなります。もっとわかりやすく言えば、20日間の値動きが大きいときはバンド幅が広がり、20日間の値動きが小さいときはバンド幅が縮小します。このことを理解することがとても大事です。
3つめはバンドの中で価格がどの位置にあるかです。+2シグマを超えているのか?ミッドバンドの位置にいるのか、もっと下か。その位置によって現在の価格が相対的にどれくらい高いか安いかが判定出来ます。
それではひとつひとつ解説していきましょう。
ミッドバンド=20日移動平均線
ミッドバンドは移動平均線そのものです。移動平均線は価格変動をなめらかにしトレンドをわかりやすくするという役割と、過去の平均買値が現在どれくらいプラスかマイナスかということがわかるという役割があります。そして価格(ローソク足)が下から上に移動平均線とクロスするのがゴールデンクロス、価格(ローソク足)が上から下に移動平均線とクロスするのがデッドクロスで、代表的な買いサイン、売りサインです。
まずはミッドバンドを使って現在がどういったトレンドなのかを見分けてみましょう。
トレンドの判定基準は以下のとおりです。
上昇トレンド=ローソク足の実体がほとんどの期間、ミッドバンドの上にある。
下降トレンド=ローソク足の実体がほとんどの期間、ミッドバンドの下にある。
もみあい期間=ローソク足の実体部分が短期間に何度もミッドバンドと交錯する。
※実体とはローソク足からヒゲを排除したもの。四角形の部分のこと。
これを見れば、現在がどのトレンドなのかが簡単に見抜けます。そして一度上昇トレンド・下降トレンドが出来上がったら、それが終了するのはミッドラインとクロスしたときです。そしてこのクロスが通常の移動平均線分析では、ゴールデンクロスであり、デッドクロスであると分かれば、ボリンジャーバンドも移動平均線の発展形であることがわかります。
バンド幅の変化はボラティリティの変化を表します。ということはバンド幅が一番広がった時、一番狭まった時に、注目するというのは当然のことです。それをボージとスクイーズと呼びます。
ボージ・・・バンド幅が最大に広がったとき=価格変動がもっとも大きかったとき
スクイーズ・・・バンド幅が最小になったとき=価格変動がもっとも小さかったとき
上記図をごらんください。ボージとスクイーズがどこかわかりますね。そして、そのボージとスクイーズの場所でトレンドが変化しているのが確認出来るはずです。
ボージとスクイーズはどちらもトレンドの転換点となりやすいのですが、しいて識別するとスクイーズはトレンドの始まりを予兆し、ボージはトレンドの終了を予兆します。
ボージ・・・トレンド終了のサイン
スクイーズ・・・新しいトレンドスタートのサイン
スクイーズは価格変動が小さかった状態から価格変動が広がっていったときに出現しますので、新たなトレンド誕生というのがよくわかると思います。ボージはトレンドの最後にそのトレンドが加速したことにより、上昇相場であれば売方の踏み、下降相場であれば買方の投げが出て相場が加速し、そこでトレンドが終了するという現象を表しています。
※踏み、売方の損失が広がって大損覚悟で全決済すること。投げはその逆で、買方の損失が広がって大損覚悟で全決済すること。
こまで分かれば、ボリンジャーバンドの仕掛け場というのが読み取れるはずです。スクイーズからバンド幅が広がっていくとき、そこが新たなトレンドのスタートを教えてくれるのですから、それが上昇トレンドであれば、まさにそこが買いの仕掛け時であり、発生したのが下降トレンドであれば、まさにそこが売りの仕掛け時ということになります。
バンド幅が広がっていくことをエクスパンションと呼びます。ボージとの違いはボージは最大に広がった場所、エクスパンションはバンド幅が広がっていく状態を指します。
スクイーズからバンド幅が広がっていくということは新しいトレンドが発生しているということを教えてくれますが、どちらにトレンドが出来るのかは教えてくれません。それをボリンジャーバンドは上限タッチ、下限タッチで判断します。上限タッチとは価格が+2シグマのバンドを超えること。下限タッチとは価格が-2シグマのバンドを下回ることです。
ここで注目していただきたいことは+2シグマ越えは売りサインではなく、買いサインだということです。-2シグマ割れも同様です。買いサインではなく、売りサインです。
スクイーズからのトレンド発生はその前にもみあい期間が長ければ長いほど、その後に発生するトレンドが大きくなると言われており、特に130本前後の中での最小スクイーズがあった場合、その後のトレンドは非常に楽しみだと言われています。
ボリンジャーバンドの基本的な手法は、順張りと逆張りの2種類です。ボリンジャーバンドの具体的な使い方について、それぞれ確認していきましょう。
順張りは、ボリンジャーバンドが表すトレンドに従って取引していく手法です。先述のとおり、価格がバンドの上限に接近している場合、それは上昇トレンドが強いことを示します。上昇トレンドが発生している際に買いのエントリーを行うことで、利益を狙うことが可能です。一方、価格がバンドの下限に接近している場合は、下落トレンドが強いと判断して売りのタイミングとなります。
また、バンド幅が広がっていくエクスパンションに入るとトレンドが形成されていくため、そのタイミングがエントリーのサインです。エクスパンションに入ったかどうかの判断は、±2シグマにローソク足がタッチした瞬間などを目安にしましょう。
さらに、チャート上にバンドウォークが発生していれば、トレンド発生の確率が高くなります。バンドウォークとは、バンドの方向に沿って価格が変動している状態のことです。バンドウォークは、トレンド発生と終了のサインとして活用することができるため、バンドウォークを発見できれば利益を狙いやすいといえるでしょう。
逆張りは、価格がボリンジャーバンドの上限や下限に達したときに、価格が反転すると予想して取引を行う手法を指します。逆張りを行う際のポイントは、ボリンジャーバンドの±3シグマ付近に価格が到達したタイミングでエントリーすることです。例えば、ローソク足が+3シグマのラインにタッチしたタイミングで買い、価格が下落して-3シグマのラインにタッチしたタイミングで利益を確定することができます。
このように、ボリンジャーバンドを使って逆張りでも利益を狙うことができますが、予想が外れた際は損失も大きくなるリスクがあります。そのため、まずは順張りの手法で利益を狙い、成果が安定するようになってから逆張りに挑戦するようにしましょう。
%bチャートというボリンジャーバンド分析の補助チャートをご存じでしょうか?海外のチャートシステムではボリンジャーバンド分析をするときに併用されることが多いのです。その%bチャートの計算式は以下のとおりです。
%b=(C-バンド下限)÷(バンド上限-バンド下限)×100
※Cは現在値
つまり現在の価格がバンドの中でどの位置にあるかを示したものです。これにより現在の価格が相対的にどれくらい高いか安いかを示しています。これがボリンジャーバンドの分析に非常に大事な考え方となります。
さて、先ほどの公式を見て、何か別のテクニカル指標の計算式と似ていると気がつきませんか?そうです。ストキャスティクスです。ストキャスティクスの代表%Kの計算式は次のとおりでした。
%K=(C-Ln)÷(Hn-Ln)×100
※Cは現在値、Lnはn日間の最安値、Hnはn日間の最高値
一見難しそうに感じる公式ですが、実は簡単です。過去○日間の最高値と最安値を見つけます。過去○日間はその範囲で値段が動いていることになります。その値動きの中で現在の価格が下から何%に当たるかというものですね。
もう一度%bチャートを見てみましょう。
%b=(C-バンド下限)÷(バンド上限-バンド下限)×100
バンドの上限と下限の中で現在の価格が下から何%のところにあるかを示しています。
どちらも現在の価格が過去何日間の中で相対的にどれくらい高いかを示しているのですが、ボリンジャーバンドはそれを偏差値で表しているのです。前回の偏差値の勉強を思い出してください。
【偏差値の計算法】
偏差値70・・・平均点+2シグマ
偏差値60・・・平均点+1シグマ
偏差値50・・・平均点
偏差値40・・・平均点-1シグマ
偏差値30・・・平均点-2シグマ
つまり、価格が+2シグマのラインにあるということは、その価格は過去20日間の値動きの中で偏差値70の高さであるということを示します。偏差値70というのは早慶の有名学部から東大といったレベルですから、すごい高いことがわかります。価格が-2シグマのところにあるということは、その価格が過去20日間の値動きの中で偏差値30の高さであるということを示しています。偏差値30というとほとんど最低水準だとわかります。
ストキャスティクスとボリンジャーバンドの共通点がおわかりいただけたでしょうか?実はボリンジャーバンドを開発したジョン・ボリンジャー氏はストキャスティクスの大フアンで、そのストキャスティクスを強化するためにボリンジャーバンドを作ったと知るとボリンジャーバンドの理解が進みます。
%bチャートは実際には描く必要はありません。ボリンジャーバンドを見れば、価格がどの位置にあるかはわかるからです。ということでボリンジャーバンドの見方に戻ります。価格がバンドの中でどの位置にあるかを知ることは現在の価格が相対的にどれくらい高いかどれくらい低いかを知ることに役立ちます。そして、バンドウォークの発見にも役立つのです。
バンドウォークとは価格が+1シグマから+2シグマの間を中心に安定上昇している状態を言います。もちろん、ときに+2シグマを超えること、-1シグマを割り込むことはありますが、ミッドラインはおおむね割れることがないというのが前提です。このバンドウォークというのは上昇トレンドの一番安定しているパターンをいい。長続きする可能性が一番ある状態です。トレンドフォロアーにとって一番大切なのはバンドウォークを早期発見することです。
バンドウォークは下降時にも下降のバンドウォークがあります。
下降のバンドウォークとは価格が-1シグマから-2シグマの間を中心に安定下降している状態を言います。もちろん、ときに-2シグマを割り込むこと、-1シグマを超えることはありますが、ミッドラインはおおむね超えることがないというのが前提です。このバンドウォークというのは下降トレンドの一番安定しているパターンをいい。長続きする可能性が一番ある状態です。
ボリンジャーバンドを使ってFXの精度を上げたい場合は、以下のテクニカル指標と併用する手法もおすすめです。
■RSI
■MACD
それぞれ解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
RSI(Relative Strength Index)とは、売られすぎ・買われすぎといった相場の過熱度を表すテクニカル指標です。日本語では相対力指数と呼ばれ、RSIを活用することでトレンドの転換や継続を分析することができます。そして、このRSIとボリンジャーバンドは相性が良く、併用することによって精度の高い分析が可能です。
ボリンジャーバンドは、標準偏差±2シグマの間に価格が収まる確率が95.45%とされています。また、RSIは70%以上で買われすぎ、30%以下で売られすぎのサインです。そのため、RSIで買われすぎ・売られすぎのサインが出た場合、±2シグマの間に価格が戻るようにトレンドが反転すると予想できます。
このタイミングを狙って順張り・逆張りのエントリーをすれば、高い確率で利益を狙うことができるでしょう。
MACD(Moving Average Convergence Divergence)とは、通称マックディーと呼ばれ、2本の移動平均線を利用することでトレンドの方向性や過熱度を分析するテクニカル指標です。日本語では移動平均収束拡散手法と呼ばれ、ボリンジャーバンドと併用することでトレンドの転換を予測しやすくなります。
例えば、ボリンジャーバンドでエクスパンションを確認できた場合、トレンドが発生する確率が上がりますが、ダマシの可能性も捨てきれません。この時、MACDのラインがシグナルの上から下に抜けるデッドクロスが発生していれば、下降トレンドに転換する確率が非常に高くなります。
さらに、バンドウォークも発見することができれば、より強い根拠を持ってトレンドの方向と強さを確認することができるでしょう。
FXでボリンジャーバンドを利用する場合、以下の注意点を把握しておくことが重要です。
■ダマシが発生する可能性がある
■売買サインは慎重に見極める
ボリンジャーバンドを使った手法で利益を狙いたい方は、しっかり確認しておきましょう。
ボリンジャーバンドに限ったことではありませんが、テクニカル指標の売買サインはダマシが発生する場合があります。そのため、ダマシにあってしまった場合に備えて、あらかじめ対策しておくことが大切です。損切りのラインを決めておいたり、逆指値注文を使って損切りの設定をしたりすることで、損失を最小限に抑えられるようにしておきましょう。
また、ボリンジャーバンドは主にトレンドの転換や方向性を分析するために利用するため、短期目線の活用にはあまり向いていません。そのため、まずは長期目線でトレンドの方向性を確認し、こまかなエントリーポイントは他のテクニカル指標も併用しながら確認してみてください。
ボリンジャーバンドでエクスパンションやバンドウォークなどの売買サインが発生した場合、利益を狙えるチャンスです。また、バンドウォークの発生を確認する前にエントリーすることで、大きな利益を狙いたいと考える方もいるでしょう。しかし、売買サインの発生後に焦ってしまい、すぐにエントリーするのはおすすめできません。
バンドウォークを発見する前にエントリーしてしまうと、相場が予想と逆方向に動くことで大きな損失につながるリスクがあります。そのため、確実に利益を狙うには売買サインをしっかりと見極めることが大切です。
状況によってボリンジャーバンドと他のテクニカル指標も併用しながら、分析の精度を上げていきましょう。
ボリンジャーバンドはボラティリティという要素をチャート分析に持ち込んだという意味で画期的な指標です。移動平均線にストキャスティクスを足してそれにボラティリティを加えたものがボリンジャーバンドと正しく読み取れれば使い方は自ずとわかってきます。
スクイーズからのエキスパンションでトレンドの発生を読み取り、そこからバンドウォークしていくところを取っていくというのが基本です。ミッドバンドが横ばいのときは、もみあい相場とわかります。もみあい相場の間だけ、+2シグマを超えたら売る、-2シグマを割り込んだら買うという逆張り戦法が有効になってきます。
当コンテンツは為替相場等に関連する一般的な情報の提供を目的としたコラムです。特定の投資方法等を推奨するものではなく、また投資の勧誘を目的とするものでもありません。
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チャート分析の第一人者としてセミナーで講師を務めるなど、教育活動を精力的に展開している人気講師。
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